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テナント選定について

テナント選定について

 

クリニックの新規開業にあたって、大きな悩みのひとつとなるのが開業場所の選定です。

開業したい場所に物件がない、希望の面積に足りないなど様々な理由で妥協を余儀なくされることも多いのが実情です。

しかし反面、何となく探してみたら希望にかなり合致した条件の物件がみつかることもある。

ただ、土地でもテナントでもせっかく見つけた開業物件が、意図しないところで大きなコストアップにつながることもあるので注意が必要です。

土地建物であれば、開業するために建てる建物なので大きな問題になることは少ないですが、テナントの場合はそうはいかないため、慎重に選ぶ必要がある。

では、どのようなポイントに注意しながら選べば良いのかをテナントの種類もふまえて説明したいと思います。

まず、テナントを探すうえでよく耳にする言葉として「スケルトン」「事務所仕様」などと言われるものがある。

これは物件を借りる際の内部の仕様を表すものです。

両方ともにイメージできる通り、「スケルトン」とは床・壁・天井が何もない状態を表し、「事務所仕様」はいわゆる事務所のような作りのものである。

一般的に内装のコストとしては「事務所仕様」の方が安いと考えられるが、医療施設となると逆に高くなるケースも少なくはない。

主な理由のひとつに他業種に比べ、圧倒的に室数が多いことが挙げられる。

室数が多くなると空調や換気設備、照明器具など全体面積に比べると多くなってしまうためにコストがあがってくる。

そういった設備を新設または移設するためには天井を一度解体したり、補修したりなど「スケルトン」では不要な作業が発生するため、全体コストとしては高くなることもあるということだ。

その他にもいろんな要因はあるが、「スケルトン」では発生しない作業がある。

「事務所仕様」でのコストダウンを図るのであれば、如何に現状のまま利用するかがポイントになる。

対して「スケルトン」の場合は、空調や照明器具なども備わっていないので「事務所仕様」よりも当然コストが高くなる。

上述のようにコスト面では一般的に「事務所仕様」の方が有利なケースが多いが、医療施設を創るとなると一概にそうとも言えない。

医療施設は他業種とは異なり、多くの制約があるうえに原則バリアフリーであることが必須になるからだ。

大抵の「事務所仕様」ビルは共用部にトイレ・給湯室などがあることが多く、手洗いや流し台の設置位置もかなり限定されるため、希望通りのレイアウトを実現することが困難になるケースも少なくない。

対照的に「スケルトン」の場合は、区画内に排水設備が整っていることが多く、手洗い・流し台程度であれば比較的自由な位置に設けることが可能である。

さらに「スケルトン」の中には床下で自由に配管を行えるよう、共用部よりも床が25~30㎝ほど下がっているような物件もある。

昨今の新築医療モールや医療用テナントなどはこのような状況になっているものが数多くみられる。

テナント物件を探す際にはどのような医療施設を創りたいのかを明確に持って、希望に見合ったレイアウトが可能かなどを検討しながら選ぶことが重要なポイントになってくる。

じっくり検討することができず、賃貸借契約を焦らされて失敗するケースもある。

さすがに建物のオーナーや仲介業者も何か月も契約までは待ってくれない。

その間に別の申込者が現れれば当然そちらに話が流れていくことになる。

結局、気に入った物件だったのに申し込むこともできずに諦めることになってしまうケースもあるので、決断はやはり早いに越したことはない。 では、どこまで検討しておけば最低限のリスクを回避のできるのか。

絶対に回避しておくべき事項として、消防法上の用途の問題が挙げられる。

これは不動産業者でも知らないことが多く、後に大きなトラブルを引き起こす原因にもなるため注意が必要です。

不動産情報や募集チラシでも「診療所に最適!」などの文言が入っているものがありますが、実際に検証してみるとこの問題が浮き彫りになるケースも少なくはない。

理不尽に思うかもしれないですが、医療施設が入ることによって建物全体の消防設備がより安全であるものを求められることがあるということです。

消防設備をそれに見合ったものに変更し、消防上の用途を変更すればこの問題は解消されるのですが、そこには必ず費用が発生する。

では、その費用は誰が負担するのか。 この問題をクリアにせずに賃貸借契約を締結してしまうと思いもよらない費用負担を強いられるケースがあるため、絶対回避しなければならない問題なのである。

消防法上の用途の確認は実際に物件を見るだけでは判断が難しいことも多く、いろんな資料をもとに検証したり、管轄の消防暑へ確認を取る必要があるため、いずれにせよ専門家の手を借りることになる可能性が高いと考えられる。

そのような観点からも物件選定はひとりで行うのではなく、専門家にも相談しながら進めていくことが良いでしょう。